保存修復治療(むし歯の治療・予防)


 できるだけご自身の歯、神経を温存する治療のことをいいます。虫歯は口の中の細菌が作り出す酸で歯が溶けていく病気です。残念ながら溶けた歯は一定の水準まで進行すると再生しません。そのため虫歯になっている部分を削り取り、修復する治療が必要になってきます。むし歯は、その進行状況によりC0~C4にまで分類されます。


 C0は、エナメル質が白く濁り歯の透明感がなくなっている状態です。この段階では削る治療は行いません。ブラッシング指導、歯のクリーニング、歯質を強化するフッ素塗布を行い歯の再石灰化を促して自然治癒を目指します。その後定期的に経過観察し、症状が進んだ段階で歯を削る治療を行います。


■ブラッシング指導

 患者さまそれぞれのお口の状態に合った、歯ブラシの選び方、歯ブラシの当て方、磨き残し部位の説明をします。必要に応じて、染め出し液を使って汚れが取れていないところを見ていただきます。


■歯のクリーニング

 歯ブラシと、超音波スケーラーを使って歯垢、歯石を除去します。


■フッ素塗布

 歯質を強化し、歯の石灰化を促すフッ素を塗布します。C1はエナメル質が溶け始めた状態、C2はむし歯が象牙質まで進んだ状態です。C1、C2の段階ではむし歯を削り取り、削った部分が小範囲であればプラスチックの詰め物(コンポジットレジン修復)、中程度の範囲であれば金属の詰め物(インレー修復)をします。むし歯の初期の段階では神経を温存させることができます。


■コンポジットレジン修復

 小範囲のむし歯の場合、虫歯のみを切削機械で除去し、削った部分を歯科用プラスチックで埋めます。この歯科用プラスチックは、歯の色に近づけることが可能です。この治療法は、むし歯が深部まで達していない場合1回で終了します。


■インレー修復

 中程度の範囲のむし歯の場合、虫歯を切削機械で除去し印象剤(粘土のような材料)で型取りを行います。歯科用金属で詰め物を作製し、セメントで合着します。この治療法は、型取りを行いますので2回かかります。C3はむし歯が歯髄(歯の神経)にまで及ぶ、大きく穴があいた状態です。神経の痛み(冷たいものでの激痛、温かいものでの痛み、何もしなくても痛いなど)が発症している場合は歯の神経を取らなければなりません。


■抜髄処置(歯の神経治療)

 虫歯が歯の中にある神経にまで達している場合、神経を取り除く必要があります。いわゆる根っこの治療です。弱っている神経を削り取り、そこに炎症を抑える消毒薬を入れます。炎症が治まる(痛みや腫れがなくなる)まで、間隔をあけて消毒薬の交換をします。むし歯の状態にもよりますが、神経の治療だけで最低でも2~3回かかります。その後(コンポジットレジン修復やインレー修復、または後述の補綴治療などの)詰め物やかぶせ物の歯を作る治療が必要となります。C4はむし歯によって歯冠が溶かされ、歯根だけが残った状態です。歯髄が死んでしまっていることが多く、痛みを感じない場合もありますが、放置しておくと歯の根に膿をつくってしまう場合がありますので、早めの治療が必要になります。歯根が残せる場合はC3と同じ抜髄処置を行います。歯根が残せない状態まで進行している場合は、残念ながら抜歯する場合もあります。


■抜髄処置(歯の神経治療):Cと同じ

 虫歯が歯の中にある神経にまで達している場合、神経を取り除く必要があります。いわゆる根っこの治療です。弱っている神経を削り取り、そこに炎症を抑える消毒薬を入れます。炎症が治まる(痛みや腫れがなくなる)まで、間隔をあけて消毒薬の交換をします。むし歯の状態にもよりますが、神経の治療だけで最低でも2~3回かかります。その後(コンポジットレジン修復やインレー修復、または後述の補綴治療などの)詰め物やかぶせ物の歯を作る治療が必要となります。神経を取り除いて抜髄処置した歯でも、何年か経過すると根の先に炎症を起こし膿がたまってしまうことがあります。この場合かぶせ物を除去し、もう一度根っこの治療をする必要があります。


■感染根管治療

 根の先にできた膿を消毒し、膿を改善させる治療です。かぶせ物を除去し、きれいに掃除した根っこから消毒薬を届けます。膿が改善するまで最低でも3回ほどかかり、その後(コンポジットレジン修復やインレー修復、または後述の補綴治療などの)詰め物やかぶせ物の歯を作る治療が必要となります。

 ※以上の治療で症状が改善しない場合には、根の口腔外科的治療が必要となる場合があります。→根切、抜歯など



歯周治療(歯槽膿漏の治療)


 歯周病とは歯を支える歯周組織の炎症で、症状としては歯肉からの出血・腫れ・膿が出る・食事など噛んだ時に痛みが出る・口臭がする・歯肉がジクジク痛む・歯がぐらつくなどがあります。歯は歯槽骨という骨に支えられていますが、細菌により歯肉が炎症を起こした状態をそのまま放置すると歯を支える歯槽骨が溶け出してしまう(骨の吸収)が始まります。これが歯周病の始まりです。歯周病は(静かな病気)と言われ、初期ではあまり自覚症状を感じませんが放置すると歯を失ってしまうこともあります。また糖尿病、呼吸器疾患、内臓疾患、心血管疾患など全身疾患との関係や妊婦さんの早産にも関係することがわかっています。歯周病は早期治療が重要になってきます。喫煙されている方は歯周病に罹患しやすいので禁煙されることをお勧めします。


■ブラッシング指導

 歯周病治療の基本は、原因となっている細菌を取り除くことです。それには毎日の歯みがきが大変重要になってきます。歯は健常者で本あり、それぞれ複雑な形をしています。手さぐりで磨いていると必ず磨き残す部分ができ、そこに歯石が付着します。毎日の歯みがきでしっかり細菌が取れるように、患者さまそれぞれのお口の状態に合った、歯ブラシの選び方、歯ブラシの当て方、磨き残し部位の説明をします。必要に応じて、染め出し液を使って汚れが取れていないところを見ていただきます。歯みがきのアドバイス、歯ブラシの使用方法、磨き残しの部位の説明をし、症状を取り除き予防します。何度も歯みがきのアドバイス、使用方法、磨き残し部位の説明させていただきますが、この繰り返しを行うことで歯みがきの上達につながります。


■歯垢・歯石除去

 歯の汚れは、歯垢・プラークと呼ばれるまだ柔らかい状態を放置しておくことで 硬い歯石という状態に変化します。歯垢・プラークの状態であれば歯ブラシで除去できますが、硬い歯石になると歯ブラシでは除去できません。専用の機械を使用し、歯石の除去を行います。まず、歯の表面の歯石を除去します。さらに歯肉の中にも歯石が付着している方は、歯肉の中の歯石も取り除きます。歯肉の中の歯石を一度に除去すると、疼痛、歯肉炎、歯肉出血を発症させる危険性もありますので数回にわけて行います。


■歯周外科

 細菌が歯肉の奥深くに入り込み、ブラッシングや歯石除去では腫れが改善しない場合は 麻酔をして腫れている歯肉を取り除きます。



口腔外科治療


 抜歯、根切、歯肉・粘膜病変の切除、顎関節症、口腔周囲疾患などの治療を行います。また、歯肉の腫れや痛みが強い場合は抗菌薬の点滴投与を行います。全身的な疾患に罹患されている患者様の外科治療は、必要に応じて医科主治医と連携して行います。


■抜歯

 ・虫歯が歯肉の中まで進行している場合

 ・歯周病が進行して歯がぐらぐらしている場合

 ・歯並びから著しく突出して萌出している場合

 ・歯が原因で歯肉が腫れている場合

 ・歯の根が折れている場合

 などは残念ながら抜歯が必要です。歯の状態にもよりますが、麻酔開始から縫合まで20~30分程度かかります。


■親知らずの抜歯

 親知らずは、前から8番目の歯で通常の人では口の一番奥にあります。歯ブラシを当てることが難しく、親知らずが原因で歯肉が腫れている場合・ほかの歯に虫歯などの影響を与えている場合に抜歯が必要となる場合があります。(親知らずは、歯の根っこが曲がっていたり横にはえていたりすると 抜くのに時間がかかります。歯が深部にあり手術侵襲が大きい場合や、処置に不安を感じる患者様は入院施設での治療をお勧めする場合があります。)


■根切

 根にできた病巣を外科的に摘出、掻破(汚れを掻き出すこと)します。根の治療で改善しない場合も、この処置を行う場合があります。根切でも改善しない場合は抜歯する場合もあります。


■嚢胞摘出

 顎の骨の中や口の中に袋状の病変が発症した場合、大きくなる前に摘出したほうが良い場合があります。


■腫瘍病変など

 口の中のできものは良性のものから悪性のものまでかなりの種類があります。病変に応じての治療が必要であり、そのための確定診断が重要となります。病変から少量の組織を採取し、病理組織診断を行います。悪性病変、または良性でも広範囲な場合は入院施設での治療をお勧めする場合があります。


■顎関節症

 口を大きく開けることができない、口を大きく開けるときに痛みがある場合は治療が必要になります。薬物療法や、マウスピースによる治療を行います。



補綴治療(かぶせ物や差し歯、ブリッジ、入れ歯、インプラント)


 歯全体が崩壊している場合(歯の一部だけに詰め物をするインレー修復とは異なります)や、抜歯した後に歯を作製する治療です。


■前装鋳造冠(前歯の治療)・全部鋳造冠(奥歯の治療)

 歯の全体がむし歯になっている場合や、虫歯が歯の神経に達している多くの場合の治療で、虫歯を除去し型取りしてかぶせ物をする治療です。歯の多くが欠損している場合、歯の土台から作る必要があります。


■ブリッジ

 1~2歯が連続して抜けて無くなっている場合に、隣り合う健康な歯を土台にしてつなげた金属歯をかぶせることにより歯を作り、噛み合わせを回復させる治療です。この場合土台となる隣接歯を削る必要があります。その隣接歯は歯周病でなく、ぐらつきのない健全な歯である必要があります。


■義歯

 歯の欠損が広範囲の場合や、ブリッジなどの隣接歯を削ることに抵抗がある方は取り外し式の入れ歯になります。入れ歯の作製期間は約3週間(型取り2回、噛み合わせ確認、適合確認、装着)かかります。入れ歯装着後も数回の調整が必要になります。


■インプラント(健康保険は適用されません)

 近年、歯が失われたあとの治療としてブリッジ、義歯とともに選択肢の一つとして行われる治療です。顎の骨の中にチタン製の土台を手術で埋め込み歯を作る治療です。インプラントは人工物であり、細菌感染に対して抵抗性が弱いためご自身で歯みがきをしていただき、定期的なメンテナンスが必要になります。



小児歯科


 ブラッシング指導、フッ素塗布などを中心とした予防治療が主体ですが、虫歯があれば治療を行います。また噛み合わせのチェックも行います。



自由診療


 ホワイトニング、審美的な治療、かぶせ物や詰め物にセラミックなど白くきれいなものを希望される場合は自由診療となります。



予防、治療後の定期健診の重要性


 むし歯、歯周病の原因は口腔内の細菌が原因です。健康な人間の口の中でも細菌が無数に存在しています。歯みがき不足(細菌がいる部分に歯ブラシの毛先が当たっていないこと)により細菌が停滞・増殖してむし歯、歯周病が発生することがわかっています。逆に考えると口の中の細菌を減らすことでむし歯、歯周病の発生・進行を抑えることができます。細菌をコントロールすることがお口の健康を維持するために重要であり、むし歯・歯周病の予防につながります。プラーク(歯垢:歯の磨き残しにより発生した細菌の塊で、歯に付着している白くネバネバしたもの)を患者さんご自身でコントロールしていただく。つまりしっかり歯みがきをしていただくことが重要なのです。歯は、でこぼこしていることに加え 口の中は直接見えません。なんとなく歯みがきをしている方や自己流で磨いている方、短時間で終了している方などプラークを除去しきれていない患者様が多くいらっしゃいます。歯みがきが苦手な部位は人それぞれで、患者様に合った歯みがき方法で細菌をコントロールすることが重要です。通院中は口腔内清掃状況を確認させていただいておりますが、治療終了後も定期的なクリーニングをお勧めしております。