1)機能歯数および義歯使用が生存期間に与える影響
宮古島の住民5730人の追跡調査の結果、調査開始時点で80歳以上であった者のうち機能歯数(実際に歯として機能している歯)が10本以上ある者は、10本未満の者と比較して生存期間の延長がみられた。
2)歯数・義歯使用と認知症発症の関係
愛知県で認知症の認定を受けていない65歳以上の4425名を4年間対性調査を行った結果、歯がほとんどなく義歯を使用していな者は、20歯以上残存する者と比較して、年齢、所得、BMI(body mass index)、治療中疾患の有無、飲酒、運動、物忘れの自覚の有無といった認知症に関係が指摘されている要因の影響を除いても、認知症発症リスクが約1.9倍高いことが明らかにされた。
3)歯数・義歯使用と転倒との関係
愛知県で過去一年間に転倒経験のない65歳以上の1763名を3年間追跡調査を行った結果、歯がほとんどなく義歯を使っていない者、20歯以上の者と比較して、性別、年齢、追跡期間中の要介護認定、抑うつ、主観的健康観、教育歴の影響を除いても、その後に転倒するリスクが2.5倍高いことが示された。
4)歯数と医科医療費に関する調査
北海道・長野県・山梨県・茨城県・兵庫県で実施された調査結果をまとめると、自分の歯が多く残っている者ほど、医科医療費が少ない傾向が明らかになった。特に自分の歯が20歯以上の者に比べて0~4本の者は、医科医療費が1.4~1.6倍となっていた。また、香川県では1年間のうち4か月分のレセプトを用いて平成23年時点で5年分の結果をまとめており、どの年度においても、歯の本数が多いほど医科医療費が少ない傾向が明らかになった。
つまり歯の残存数が多ければ、健康でかつ医科医療費も少なくできる可能性があることを示している。歯、かみ合わせは頭の位置、体のバランス機能に影響を与えることが指摘されており、歯がないと顎が不安定になり体のバランス機能が影響を受けて転倒しやすくなる。栄養に関しても、歯がない患者さんは生野菜などは避け、ビタミン不足になる可能性がある。歯を残したからといってずっと健康でいられる保証はないが、健康な高齢者のデーターをみると歯は残っているようだ。今後、ますます歯と健康に関連したデーターが報告されると思う。